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素敵なエスプレッソに出逢うには

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目次 - バリスタとは何か - バリスタの資格 - バリスタの学校・教室 - バリスタになるには - 競技大会


バリスタ競技大会について

1.大会概要 (全日本バリスタチャンピオン競技大会とは?)
2.競技ルール (どんなルールなの?)
3.審査基準 (何を基準に採点するの?)
4.審査基準の解説 (プロのバリスタに求められるものとは?)
5.アドバイス (必勝法?)


バリスタ大会 バリスタ大会
 全日本バリスタチャンピオン競技大会2003の模様 (2003年3月13日)


1.大会概要 (全日本バリスタチャンピオン競技大会とは?)

 アメリカの有力なコーヒー業界団体の一つである米国スペシャルティーコーヒー協会(SCAA: Specialty Coffee Association of America)及びイギリスに事務局を置く欧州スペシャルティーコーヒー協会(SCAE: Speciality Coffee Association of Europe)は、2000年より毎年「世界バリスタチャンピオン競技大会」(注1)(WBC: World Barista Championship)を開催しています。
 第1回大会 2000年 モンテカルロ (モナコ)
 第2回大会 2001年 マイアミビーチ (アメリカ)
 第3回大会 2002年 オスロ (ノルウェー)
 第4回大会 2003年 ボストン (アメリカ)
 第5回大会 2004年 トリエステ (イタリア)(予定)

 この大会の日本版として「全日本バリスタチャンピオン競技大会」が開催されています(注2)。2003年の決勝大会(地方予選及び準決勝の優秀者による)は、3月12日に東京ビッグサイトで開催されました。大会優勝者の門脇洋之氏(カフェ・ロッソ)は4月にボストンで開催される世界大会に日本代表として出場し、第7位となりました。

(注1) 一般的には「バリスタ選手権大会」と訳すべきでしょうが、ここでは全日本大会の用語法に合わせます。
(注2) 日本では過去、2001年11月に開催された大会(優勝者:門脇洋之氏(カフェ・ロッソ)全日本大会のみ)と2002年5月に開催された大会(優勝者:横山千尋氏(バール・デル・ソーレ)世界大会9位)がありましたが、これらは主催者やルールが異なっています。2003年大会では双方の主催者が関与し世界大会のルールが適用されました。2004年以降は、新たに設立された日本スペシャルティーコーヒー協会が大会を主催します。

 この大会は公的なものではなく、あくまでも複数の民間団体の主催によるものですが、現時点において、プロのバリスタがその所属を問わず応募でき、全国規模で技術を競うことのできる大会としては唯一のものです。競技ルール及び審査基準は世界大会のものが適用されます。

 この大会は、あくまでも主催者の定めた競技ルールと審査基準にどれだけ沿っているかで結果が決まるものであり、これが世の中で唯一無二の「良いバリスタの条件」という訳ではありません。特に、アメリカの団体が中心となって大会が誕生した経緯もあり、いわゆるシアトル系のカフェにおけるバリスタが想定されていますので、いわゆるイタリア系のバールのバリスタや、以前から日本で独自に営業を行っている喫茶店系のバリスタにとっては勝手の違う面も多々あると思います。

 ましてや自宅でエスプレッソを楽しむアマチュアのバリスタにとって、この大会の競技ルールと審査基準は異質のものです。しかしながら、この競技ルールと審査基準を概観することにより、少なくともこの大会の関係者にとって、プロのバリスタに何が求められているのかをうかがい知ることができます。その中には、アマチュアのバリスタにとっても何かしら参考になる事項があるかもしれません。以下では、世界大会の公式サイトの記述を参考に、この大会の競技ルールと審査基準を概観してみます。

(以下は公式サイトの翻訳ではなく、その概要を整理して分かりやすく紹介するものです。正確な表現を知りたい方は公式サイト(http://www.worldbaristachampionship.com/)(英文)を直接ご参照下さい。)



2.競技ルール (どんなルールなの?)

競技について

 各競技者は、15分以内に、4杯のエスプレッソと4杯のカプチーノと4杯のエスプレッソをベースとする(アルコールの入っていない)オリジナルドリンクを作って、4人の審査員に出さなければなりません。
 3種類のドリンクを出す順番は自由ですが、同じ種類のドリンクについては4杯を同時に審査員に出さなければなりません。
 15分の時間枠内であれば、競技者はドリンクを何回でも作り直すことができます。最終的に審査してほしいドリンクを審査員に出せば、出されたドリンクのみが審査されます。

計時について

 各競技者は、開始と終了の合図をしなければなりません。計時は、競技者が開始の合図をした時から始まり、最後のドリンクを審査員に出して競技者が終了の合図をした時に終わります。
 もし競技者が15分の時間枠内で競技を完全に終えられなかった場合、2分以内の延長が許されますが、延長された時間に応じて一定の減点がなされます。2分以上の時間超過は失格となります。

競技エリアについて

 会場には3ヶ所の競技エリアが設けられています。各競技エリアにはラマゾッコ社製の業務用エスプレッソマシン(日本ではスターバックスやマキネスティ等で使用されている)及び同社のグラインダーが用意されています。競技者はこのマシンを使用しなければなりません。
 各競技エリアには、主催者及びスポンサーにより基本的な素材と道具が用意されていますが、競技者は、好みの素材や道具(コーヒー豆、グラインダー、乳製品、砂糖、香辛料、ハーブ、シロップ、カップ、グラス、スプーン、トレーなど)を持ち込み使用することが許されます。むしろ、主催者は、競技に必要なすべての素材や道具を持参することを推奨しています。
 競技エリア外からの指導は禁止されています。もし競技者が素材や道具を忘れた場合でも、競技者は自分で競技エリア外に借りに行かなければならず、応援者や聴衆や同僚に届けてもらうことは禁止されています。これらに対する違反は失格の理由になります。

競技の進行について

 各競技者には準備開始時間と競技エリア(マシン)番号が指定されます。各競技者には、15分の準備時間、15分の競技時間、15分の片付け時間が与えられます。審査の対象は競技時間のみです。
 最初の競技者は、1番のマシンを使い、15分の準備時間を経た後、15分の競技時間が開始されます。同時に、2番目の競技者は、2番のマシンを使い、15分の準備時間に入ります。
 最初の競技者が15分の競技時間を終え、15分の片付け時間に入ると同時に、2番目の競技者は15分の競技時間に入ります。更に同時に、3番目の競技者は、3番のマシンを使い、15分の準備時間に入ります。
 このように、複数のマシンを順番に使って競技を行うことにより、審査員は、各競技者による競技を連続して審査することになります。もし前の競技者が時間を超過したために審査員が次の競技者の審査を開始する準備ができていない場合は、次の競技者は15分の準備時間が終了した後に一旦マシンの前を離れ、審査員の準備が整って司会者がアナウンスするまで待つよう求められます。

時間\エリア No.1 No.2 No.3
0:00-0:15 1人目の準備時間    
0:15-0:30 1人目の競技時間 2人目の準備時間  
0:30-0:45 1人目の片付時間 2人目の競技時間 3人目の準備時間
0:45-1:00 4人目の準備時間 2人目の片付時間 3人目の競技時間
1:00-1:15 4人目の競技時間 5人目の準備時間 3人目の片付時間
1:15-1:30 4人目の片付時間 5人目の競技時間 6人目の準備時間
1:30-1:45   5人目の片付時間 6人目の競技時間
1:45-2:00     6人目の片付時間
模式図:競技の進行 (複数のエリアを使って効率よく競技が行われる)



3.審査基準 (何を基準に採点するの?)

競技者は下記の基準により審査されます。

ドリンクの完成度
 個々のドリンクの課題に対し、用いられた素材とドリンクのスタイルについて点数が与えられます。甘味と苦味と酸味と香りの印象の調和が重視されます。各競技者は審査員に対して口頭で、用いられた素材とドリンクの背景にある考えを説明することが期待されています。

ドリンクのプレゼンテーション
 カップやグラスや付属品を含め、最終的に全体として、ドリンクの外見のプレゼンテーションについて点数が与えられます。

バリスタの技術
 競技者のバリスタとしてのテクニックとマシンへの対応について点数が与えられます。これは、身のこなしや清潔さへの気配りやマシンの操作や15分の時間枠へのこだわりなどを含めた、マシンやグラインダーなどの使いこなしを意味します。

バリスタのプレゼンテーション
 競技者が聴衆や司会者や関係者や審査員などに対して示す、バリスタとしての個人的な態度について点数が与えられます。15分の時間枠の間に競技者は司会者から質問を受けることがあります(世界大会では、事前に主催者に依頼すれば通訳が手配されます)。各競技者にはマイクが装着され、競技時間の間は競技者の音声が会場に流されます。なお、各競技者は競技時間中に会場に流す音楽CDを持参することができます。

具体的な審査基準(採点表)は以下の通りです。

採点表 (147点満点)

第1部:基本姿勢 (配点:8点)

競技エリアの状態
 ・作業台は清潔か (1点)
 ・付属品は揃っているか (1点)
 ・カップは温められているか (1点)
 ・清潔な布巾が用意されているか (1点)

バリスタの個人的姿勢
 ・自己主張ができるか (1点)
 ・熱意があるか (1点)
 ・細やかな気配りがあるか (1点)
 ・身なりは整っているか (1点)
第2部:エスプレッソ (配点:41点)

技術点
 ・グラインダーの操作は適切か (1点)
 ・抽出口を湯通ししているか (1点)
 ・抽出前にフィルターを乾燥・清掃しているか (1点)
 ・コーヒーの粉で周囲を汚していないか (1点)
 ・粉の計量と詰め込みは適切か (1点)
 ・フィルターホルダーを装着前にきれいにしているか (1点)
 ・迅速に抽出を開始しているか (1点)
 ・抽出時間は適切(20~30秒)か (1点)

味覚点
 ・クレマの色(ヘーゼルナッツ色、濃褐色、赤み) (6点)
 ・クレマの状態(2~4ミリ、濃密) (6点)
 ・クレマの持続(長持ちし、中央が空かない) (6点)
 ・味覚のバランス(甘味・酸味・苦味の調和) (6点)
 ・触覚のバランス(コク、円やかさ、滑らかさ) (6点)

ドリンクのプレゼンテーション
 ・4杯を同時に出しているか (1点)
 ・適切なカップ又はグラスを用いているか (1点)
 ・付属品(スプーン、砂糖、水など)を出しているか (1点)
第3部:カプチーノ (配点:45点)

技術点
 ・抽出口を湯通ししているか (1点)
 ・抽出前にフォルダーを乾燥・清掃しているか (1点)
 ・コーヒーの粉で周囲を汚していないか (1点)
 ・粉の計量と詰め込みは適切か (1点)
 ・フィルターホルダーを装着前にきれいにしているか (1点)
 ・迅速に抽出を開始しているか (1点)
 ・抽出時間は適切(20~30秒)か (1点)
 ・泡立て前のピッチャーは清掃されているか (1点)
 ・泡立て前にノズルを空ぶかししているか (1点)
 ・泡立て後にノズルを清掃しているか (1点)
 ・泡立て後にノズルを空ぶかししているか (1点)
 ・泡立て後にピッチャーを清掃しているか (1点)

味覚点
 ・カプチーノ(伝統的又はラテアート)として外見が適切か (6点)
 ・ミルクの泡の状態(滑らか、艶やか、大きな泡粒がない) (6点)
 ・ミルクの泡の持続(長持ちし、形が崩れない) (6点)
 ・カプチーノの温度(熱すぎず、ぬるすぎず) (6点)
 ・味覚のバランス(豊かで甘いミルクとエスプレッソ) (6点)

ドリンクのプレゼンテーション
 ・4杯を同時に出しているか (1点)
 ・適切なカップを用いているか (1点)
 ・付属品(スプーン、砂糖、香辛料など)を出しているか (1点)
第4部:オリジナル・ドリンク (配点:43点)

技術点
 ・抽出口を湯通ししているか (1点)
 ・抽出前にフォルダーを乾燥・清掃しているか (1点)
 ・コーヒーの粉で周囲を汚していないか (1点)
 ・粉の計量と詰め込みは適切か (1点)
 ・フィルターホルダーを装着前にきれいにしているか (1点)
 ・迅速に抽出を開始しているか (1点)
 ・抽出時間は適切(20~30秒)か (1点)

評価点
 ・ドリンクに関する適切な説明 (6点)
 ・ドリンクの外見(優美さ、清潔さ、カップやグラスの使用法) (6点)
 ・味覚のバランス(エスプレッソ及び副材料の味) (6点)
 ・適切な温度(ホットまたはアイスのドリンクとしての適温) (6点)
 ・創造性 (6点)
 ・バリスタの技術(ミルク泡立て、アイスドリンクの扱いなど) (6点)
第5部:総合的評価 (配点:10点及び減点)

 ・総合的評価 (10点)
 ・時間超過 (減点)

6点満点の項目に対する配点の基準
 0点=不可  1~2点=可  3~4点=良  5点=優  6点=特

時間超過による減点の基準
1~ 30秒超過: 3点
31~ 60秒超過: 6点
61~ 90秒超過: 9点
91~120秒超過: 12点
120秒以上超過: 失格



4.審査基準の解説 (プロのバリスタに求められるものとは?)

 上記の審査基準の中には、家庭で楽しむアマチュアはもちろん、プロのバリスタにとっても耳慣れないものが多いでしょう。「どうしてそんなことが必要なのか?」と思われる項目もあるでしょう。以下では、個々の審査基準において主催者が競技者に(つまりプロのバリスタに)何を求めているかを見てみます。その中には、アマチュアのバリスタにとっても何かしら参考になる事項があるかもしれません。


第1部:基本姿勢

競技エリアの状態
 ・作業台は清潔か
 ・付属品は揃っているか
 ・カップは温められているか
 ・清潔な布巾が用意されているか

 大会の場合、準備時間のうちに清潔にしておくことは当然として、必要な材料や道具を使いやすい位置に揃えておく必要があります。競技時間が始まってから忘れ物に気付いてエリア外に借りに行くのは致命的な時間のロスになります。業務用マシンの天井部はカップを置いて温められるようになっているので、準備時間のうちから必要なカップ及び予備のカップを十分に温めておく必要があります。清潔な布巾もふんだんに使えるよう多めに用意しておく必要があります。

 実際のお店では、必要なものは揃っているでしょうが、置き場所が悪くて、迅速にドリンクを作る上で非効率になっていることもあります。清潔さに欠けるのは、仮に衛生面で問題ない程度の汚さであっても、その店とバリスタに対する客の印象は著しく下がります。

バリスタの個人的姿勢
 ・自己主張ができるか
 ・熱意があるか
 ・細やかな気配りがあるか
 ・身なりは整っているか

 お店においても、バリスタは単なるドリンクをつくる職人であるだけでなく接客の側面も重要です。大会では審査員や聴衆の目を意識して、朗らかに熱意をもって取り組む必要があります。ドリンクの説明をするだけでなく、ちょっとした質疑応答もあるでしょう。

 「細やかな気配り」や「身なり」については配点が1点ですので、常識的な対応をしていれば得点できると思いますが、「競技エリアの状態」の項目で得点でない項目があるような競技者は注意が必要です。


第2部:エスプレッソ

技術点
 ・グラインダーの操作は適切か
 ・抽出口を湯通ししているか
 ・抽出前にフィルターを乾燥・清掃しているか

 グラインダーについては、15分の準備時間の間に最適の挽き具合に設定しておき、抽出の度に豆を新たに挽きながら使うことが期待されています。競技時間中であっても抽出具合が悪ければ調節する必要が生じるかもしれません。ここで前提とされているのは「豆の最適な挽き具合はマシンとの相性や気候に応じて変わる」ということと「豆は挽いた瞬間から風味の劣化が急速に進む」ということです。この考え方によれば、缶入りやパック入りの予め挽かれた豆を使ったり、準備時間の間に予め大量の豆を挽いておいたりすることは「ベストを尽くしていない」と判断されるでしょう。

 抽出口を湯通しするのは、清掃(前回抽出時のコーヒー滓の残りを洗い流す)と保温(抽出時に湯温の低下を最低限に抑える)の二つの目的があります。フィルターについても、同じ観点から、前回の抽出後の滓を叩き出したらお湯で洗い流し、清潔な布巾で拭き取ることが期待されています。滓が残留している状態はもちろん、お湯で洗って濡れたままの状態であっても、新しい粉を詰め込む際の新たな汚れや雑味を生む要因になります。店によってはこれらの作業を省略することもあるでしょうが、大会では「ベストを尽くしていない」と判断されるでしょう。

 ・コーヒーの粉で周囲を汚していないか
 ・粉の計量と詰め込みは適切か
 ・フィルターホルダーを装着前にきれいにしているか

 挽いた粉をフィルターに詰めてフィルターホルダーをマシン本体に装着する際、若干のコーヒーの粉が作業台にこぼれてしまうことは不可避です。しかし、こぼれる量を最低限にとどめ、こぼれる作業スペースを最小限に抑え、抽出の間などのちょっとした時間を利用してこまめに清掃することが求められています。こぼれる粉が多いとコーヒーの無駄につながるだけでなく、こぼれて酸化した粉が道具に付着すると風味の低下につながります。

 挽いた粉をフィルターに入れてタンパー(押しつけ器具)で詰め込む作業(タンピング)はエスプレッソの味を大きく左右します。お店ではドリンクの仕上がりのみで判断するという考え方もあるでしょうが、大会ではバリスタの技能をみているので、安定した動作で毎回ばらつきのない計量と均等な詰め込みを行うことが重要です。

 粉の計量と詰め込みを終えた時点で、フィルターホルダーの外周部にはコーヒーの粉が付着しています。これを軽く払い落としてから本体に装着しないと、付着した粉は、フィルターホルダーと本体の接合部にこびりつき、圧力漏れによる味の低下やマシンの故障の原因になります。お店では定期的に清掃すればよいという考えもあるでしょうが、大会では「ベストを尽くしていない」と判断されるでしょう。

 ・迅速に抽出を開始しているか
 ・抽出時間は適切(20~30秒)か

 お店においても注文に応じて迅速にドリンクを出すことは重要ですが、それ以上に、大会においては「コーヒー豆は挽いた瞬間から着実に劣化が進む」「フィルターやフィルターホルダーは湯通しが終わった瞬間から着実に温度が下がる」という考え方に基づき、より良いエスプレッソを追求する観点からも迅速な作業が重要視されます。

 抽出時間が20~30秒というのは先人の試行錯誤の結果としての経験則ですが、単にマニュアル的に数字を守ればよい訳ではありません。実際には諸条件(豆の種類と鮮度、挽き具合、分量、詰め込み方、マシンの性能など)に応じて最適な抽出時間と抽出量は変わります。お店では独自の基準を設けているところもあるでしょう。逆に言えば、大会では、理想的な抽出時間がこの範囲に収まることを目標に豆を選択し挽き具合などを調節することが求められています。

味覚点
 ・クレマの色(ヘーゼルナッツ色、濃褐色、赤み)
 ・クレマの状態(2~4ミリ、濃密)
 ・クレマの持続(長持ちし、中央が空かない)

 クレマ(表面の泡)は美味しいエスプレッソの象徴のようによく言われます。実際にはクレマは抽出の技術以前に豆の選択(生豆の品質、ブレンド、焙煎度合、焙煎後の日数)に大きく左右されるので、お店によってはクレマが薄くても美味しいエスプレッソもあれば、その逆もあります。しかし、同じ豆であれば、上記の条件を満たすクレマを目標に挽き具合や抽出方法を微調整することが美味しいエスプレッソにもつながります。大会では、持ち込む豆の選択と現場での微調整の双方が問われることになるでしょう。

 ・味覚のバランス(甘味・酸味・苦味の調和)
 ・触覚のバランス(コク、円やかさ、滑らかさ)

 味というのは実際には豆の選択から抽出方法までベストを尽くした結果としてついてくるものであり、大会の現場で味の基本が変えられるものではありません。店によっては酸味を重視したブレンドや苦みを重視したブレンドも用いられ、それが店の個性でもありますが、大会ではバランスが重視されます。大会では、準備時間の間に抽出具合とクレマの状態と試飲の味を頼りにセッティングを調整することになります。

ドリンクのプレゼンテーション
 ・4杯を同時に出しているか
 ・適切なカップ又はグラスを用いているか
 ・付属品(スプーン、砂糖、水など)を出しているか

 お店では「出来上がった順に出す」というところも多いと思います。大会では「4杯を同時に出す」というのはルールの要請ですからクリアしなければならないのは勿論ですが、1杯ずついれていては、時間がかかるだけでなく、最初の一杯は冷めてしまいクレマも薄れてしまいます。結果的に、いかに迅速に手際よく作業を進めるかが問われています。

 エスプレッソの場合には、デミタス(小さなカップ)の中でも、保温性に優れてエスプレッソの色が引き立つ、白地で厚手の陶器カップを用いるのが一般的です。もし何か意図があって別のカップやグラスを用いる場合には説明を加える必要があるでしょう。
(シアトル系の店でもテイクアウトでなければ紙コップを用いないのが本来の姿です。カップやタンブラーを持参すると割引になるのも本来は無駄なゴミを出すべきでないと言う理念に基づくものです。)

 審査表には付属品としてスプーン、砂糖、水が例示されていますが、合理的な説明があれば、スプーンでない混ぜ棒でも、砂糖でない甘味でも構わないでしょうし、その他に更に何かを出すか(例:紙ナプキン、おしぼり、ココアパウダー、チョコレート)は普段の店のスタイルにもよるでしょう。過剰に出すのも如何なものかと思います。


第3部:カプチーノ

技術点 (エスプレッソと同じ項目は省略)
 ・泡立て前のピッチャーは清掃されているか
 ・泡立て前にノズルを空ぶかししているか
 ・泡立て後にノズルを清掃しているか
 ・泡立て後にノズルを空ぶかししているか
 ・泡立て後にピッチャーを清掃しているか

 ミルク泡立て用のピッチャーを清掃するというのは一見当然に思えますが、ミルクの泡立てを何度も連続して行う際に、前のミルクの残りが付着していたり、すすいだ水が残っていたりすると、次のミルクの味が落ちたり薄くなったりしてしまいます。

 泡立て前にノズルを空ぶかしするのは、スチームの強さを確認する意味もありますが、内部の水滴を吹き飛ばしノズルを温める意味があります。いきなりミルク泡立てを始めると、内部にたまっている水滴も出てきますし、冷えたノズルの中を通る最初の蒸気も水滴になってしまい、ミルクを薄めてしまいます。

 泡立て後には直ちに濡れ布巾でノズルを拭かないと、熱でミルクがこびりついてしまいます。更に、ノズルの内部にもミルクが残留しているので、ノズルを空ぶかしして吹き飛ばす必要があります。

味覚点
 ・カプチーノ(伝統的又はラテアート)として外見が適切か
 ・ミルクの泡の状態(滑らか、艶やか、大きな泡粒がない)
 ・ミルクの泡の持続(長持ちし、形が崩れない)

 業務用マシンで作るカフェラテとカプチーノの違いは相対的なものであり、液体部分と泡の部分の比率に規制はありません。したがって、フワフワの泡が一杯のドライカプチーノにしても良いし、ラテアートを描きやすいカフェラテにしても良いのですが、自分が何をつくろうとしたかの説明は必要でしょう。

 お店によっては泡粒の大きな泡を見かけることがありますが、泡粒が小さくて見えず表面が光って見えるような泡が理想的です。そのような泡の方がかえって長持ちします。

 ・カプチーノの温度(熱すぎず、ぬるすぎず)
 ・味覚のバランス(豊かで甘いミルクとエスプレッソ)

 ミルクは80度を超えると成分が熱で変化して美味しさが損なわれ加熱臭も出てきます。70度程度(手で触って持てなくなる程度)で泡立てを終える必要があり、温度が上がる前にいかに十分に空気を含ませられるかが重要です。

 温度が適切であればミルクは自然な甘みを示します。あとはエスプレッソとの分量の比率ですが、これはエスプレッソとの味との相性もあるので、事前によく検討して決めておく必要があるでしょう。

ドリンクのプレゼンテーション (エスプレッソと同じ項目は省略)
 ・適切なカップを用いているか
 ・付属品(スプーン、砂糖、香辛料など)を出しているか

 カプチーノの場合も、デミタスよりはサイズは大きくなりますが、白地で厚手の陶器カップを用いるのが一般的です。自分が出そうとするドリンクの分量に合わせたサイズのカップを用意する必要があります。ミルクと泡のコントラストを視覚的に訴えるためにグラスを用いる店もありますが、そのような意図があって別のカップやグラスを用いる場合には説明を加える必要があるでしょう。

 エスプレッソと違い、カプチーノの場合は香辛料を添える店が多いです。イタリア系の店ではココア程度ですが、シアトル系の店では他にシナモン、バニラパウダー、ナツメグなど選択肢がいろいろあります。自分のスタイルに合わせて選択し説明する必要があるでしょう。


第4部:オリジナル・ドリンク

技術点 (エスプレッソと同じなので省略)

評価点
 ・ドリンクに関する適切な説明
 ・ドリンクの外見(優美さ、清潔さ、カップやグラスの使用法)
 ・味覚のバランス(エスプレッソ及び副材料の味)
 ・適切な温度(ホットまたはアイスのドリンクとしての適温)
 ・創造性
 ・バリスタの技術(ミルク泡立て、アイスドリンクの扱いなど)

 オリジナル・ドリンクですから、その名前、由来、材料、作り方、その他の思い入れについてバリスタが飲み手に伝えることが重要です。大会ですから「飲めば分かる」「美味しいと思ってくれればそれでいい」という訳にはいきません。もちろん、弁舌が流暢であれば良いという訳でなく、その説明を実際のドリンクが(外見、味覚ともに)体現していることが重要です。


第5部:総合的評価

 ・総合的評価
 ・時間超過

 総合的評価は主観的なものですし、文字通り総合的なものですので、これはベストを尽くした上で審査員の判断にお任せすることになるでしょう。時間については途中経過をチェックしながら臨機応変に対応する必要がありますが、急いで時間を短縮できることと出来ないことがあります。時間に気を取られてドリンクが台無しになっては元も子もありません。事前の練習が重要です。



5.アドバイス (必勝法?)

 このように、この大会の審査基準は、現在の日本における多くの店でバリスタがいつも行っている作業とは異なる点も含まれていると思いますし、ましてや家庭で楽しむアマチュアにとっては無縁の項目もあると思います。

(だからこそ、その違いが何かをよく読めば、この大会に向けての「必勝法」のアイデアも浮かぶのですが、これはプロの方が真剣に競技を行う大会ですので、ここで興味本位に取り上げることは差し控えます。)

 家庭で楽しむアマチュアのバリスタにとっては、来客をうまくもてなすことが出来るかが何よりの「大会」です。この場合、来客に満足してもらえるかどうかは全くの主観的判断に委ねられます。それでも、プロの大会の審査基準の中で、自分にとっても参考になる部分があれば、それを追求することにより、客観的にはよりよいドリンクによるより良いもてなしにつながります。そして、そのようなあなたの努力はきっと飲み手にも伝わることでしょう。このページが、あなたにとっての「大会必勝」の参考になれば幸いです。


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