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素敵なエスプレッソに出逢うには

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エスプレッソのいれ方について

 どうしたら店で飲むようなエスプレッソになるの?

(簡単に言えば…)
  エスプレッソ・マシンの種類が違えばおいしくいれるコツも違います。機種に応じたいれ方を工夫して素敵な一杯に出逢いましょう。


(難しく言えば…)
 エスプレッソ・マシンの使い方の要領は機種別に異なるので、まずは、それぞれの説明書やマニュアルをよく読んで、それに従ってください。(分からないことがあれば「エスプレッソ・ラウンジ」で相談して下さい。)ここでは、更に美味しいいれ方を自分で工夫する際に参考となる、エスプレッソ抽出における12のチェック・ポイントについて説明します。
 エスプレッソの味は様々な要因によって変化します。美味しいエスプレッソを淹れるのは、それぞれの要因においてベスト・ポイントを探すという、12元連立方程式を解くような作業です。抽出のたびに複数の要因をあれこれ一度に変えようとせず、他の条件を極力同じに保ちつつ、簡単なチェックポイントから試してみて下さい。
 連立方程式ですから、正解(最適の組み合わせ)は一つとは限りませんし、豆の状態のように日々変わる要因もあります。試行錯誤が終わることはないのかもしれませんが、少しでも素敵な一杯に近づく参考になれば幸いです。


初級編「今すぐ出来るチェックポイント」

 エスプレッソを抽出してみて、それが満足のいく仕上がりでなかった場合は、まずは次の4点をチェックしてみましょう。


抽出の量

 エスプレッソで一番ありがちな失敗は、理想的な抽出量を超えてしまうことです。過抽出のエスプレッソは、お茶の出がらしのようなもので、雑味成分が多く、美味しくありません。理想的な抽出量は器具や豆の種類等により異なりますが、一般的には一杯分が30cc〜60ccです。もしこれよりも大量に抽出されているのであれば、今度は早めに抽出を終えてみましょう。直火式の器具の場合、まだ下部にお湯が残っていても構わないので、少し早めに火から降ろしてみましょう。マシンの場合は、少し早めにスイッチを操作して抽出を止めてみましょう。
 但し、最初の一滴が一番美味しいという訳ではありません。気になる人は5秒ごとに別のカップに受けてみて味の違いを比べてみても構いませんが、科学の実験にハマってコーヒーを楽しむという本来の目的が見失われてしまわないよう、ほどほどに。


砂糖の量

 エスプレッソは砂糖の入れ具合によって驚くほど味わいが変わってきます。飲み比べてみて「砂糖抜きの方が好きだ」という人はもちろん砂糖抜きで構いませんが、普通のコーヒーをブラックで楽しんでいる方も、一度は試してみて下さい。エスプレッソ一杯分の量のオレンジジュースやコーラにも砂糖1〜2さじ相当の糖分が含まれていることを考えれば、普通の人にとって特に体に悪いことをしている訳ではありません。
 お店で飲む場合は入れすぎて飲めなくなると困るので、砂糖の量を控えめにしてしまいがちですが、自宅の場合は、万一入れすぎても抽出のやり直しが簡単にできるので、味見をしながら砂糖を少しずつ加えていき、味の変化を確かめてみて下さい。思わぬ発見があるかもしれません。
 (エスプレッソにミルクを加えてラテやカプチーノをつくる場合も同様です。味見をしながらミルクを少しずつ加えていき、味の変化を確かめてみて下さい。)


豆の圧力 (ポッド式やカプセル式のマシンの方には本項目は不要です。)

 コーヒー豆の粉をフィルターに詰め込む(タンピング)際に何kg重の圧力で押せばよいかは、器具により、また豆の細かさ(挽き加減)により変わるので、一概には言えませんが、直火式器具の場合は比較的軽く、ポンプ式マシンの場合は比較的強く詰め込みます。  詰め込み方が弱すぎると、圧力のかかったお湯は、豆の旨味成分を溶かす間もなく、豆の粉と粉の間を通って外へ出ていってしまうので、美味しくありません。逆に、詰め込み方が強すぎると、お湯が全く通り抜けることができなかったり、あるいは比較的詰め込み方の弱い部分を探してそこから一気に外へ出ていってしまうかもしれません。
 お湯が豆の粉全体を通り抜けていくためには、適度の力で均一に詰め込む必要があります。抽出具合(早すぎないか、遅すぎないか)も参考にしつつ適度の圧力を探して下さい。


豆の分量

 コーヒー豆の粉を器具に詰め込む際の分量については、まずは説明書に従って下さい。その上で、仕上がりに不満がある場合は、豆の量を少し変えて試してみましょう。一般的に、豆の量が少な過ぎると、より早い段階で過抽出になってしまいます。その一方で、豆の量が多過ぎても、豆の粉がお湯を吸って膨らむ余地がなくなり(ドリップコーヒーでも「蒸らし」の作業が大切なように)豆の旨味成分が十分に溶け出なかったり、あるいは詰め込み方が強すぎる場合と同じような不都合が生じます。
 家庭では、美味しくしようと奮発してつい豆の量が多過ぎになりがちなので注意して下さい。フィルターに豆を詰めて器具・マシンに取り付け、一度外してみて下さい。粉の表面に上部部品の跡形がついていたり、上部部品に粉が付いているようであれば、空間の余裕がない証拠です。お湯を通したときに粉が膨らむ余裕がないと、うまく抽出できないことがあります。


中級編「豆に関するチェックポイント」

 エスプレッソの仕上がりを一番大きく左右するのはコーヒー豆です。今すぐできるチェックポイントで納得できなかった場合は、次の4点をチェックしてみましょう。


豆の挽き具合

 直火式の器具や蒸気式のマシンには細挽きの豆を、ポンプ式のマシンには極細挽きの豆を使いますが、個々の器具やマシンによって最適の挽き具合は異なります。家庭に豆挽き器がある場合は、同じ豆でも異なる挽き具合のものを飲み比べてみましょう。店で挽いた豆を買ってくる場合は、同じ豆を異なる挽き具合で買ってみるか、次回に異なる挽き具合のものを買えるよう、その店での挽き具合の設定を店員に聞いておくとよいでしょう。
 ポンプ式マシンの場合、はちみつが細く垂れる速度で抽出されるのがよいとよく言われます。余りにも出方が速すぎる場合や遅すぎる場合は、豆の圧力(詰め込み具合)と豆の挽き具合の双方を変えて試してみましょう。
 家庭の豆挽き器、特に手動式のミルやブレード式(プロペラ状の刃が回転する方式の)グラインダーでは、エスプレッソに適した細かさに挽けないものがあります。一番細挽きにしても納得のいく仕上がりにならない場合は、コーヒー豆の専門店やエスプレッソのチェーン店で豆を買い、お使いの器具・マシンに合わせて挽いてもらってみて下さい。それにくらべて自宅で挽いた豆が粗すぎるのであれば、店で挽いてもらうか新しい豆挽き器の購入を検討することをお勧めします。


豆の煎り具合

 同じ豆でも浅煎りだと酸味が、深煎りだと苦みが強調される傾向にありますが、豆の種類によって最適の煎り加減は異なります。エスプレッソには深煎りの豆を使うのが一般的ですが、深ければ深いほど良いとは限りません。注文に応じて焙煎してくれる店を利用するのであれば、同じ豆を異なる煎り加減で買ってみて飲み比べてみるのも一案です。
 そうでない場合は、次のチェックポイント「豆の種類」の一環として豆の煎り具合をチェックすることになります。イタリアのメーカーでもラヴァッツァやイリーの豆には比較的酸味があり、シアトル系チェーン店の味に親しんでいる人の中には驚く人がいるかもしれません。煎り具合も含めて好みの豆を探してください。


豆の種類

 どの店でどの豆を買うかというのは豆選びの核心ですが、正解がある訳ではありません。「エスプレッソ用の豆について」のページにも関連情報を掲載していますので、選ぶ際の参考にして下さい。
 好みの豆に巡り逢うためには、最初の店でいきなり様々な種類の豆を試してみるよりも、ある店でエスプレッソにお勧めの豆を試してみたら次は別の店の豆を試してみて、ある程度気に入った店ができてから、その店の他の種類の豆も試してみる方が効率的かもしれません。エッセイ・エスプレッソ第16話「ブレンドは豆のオーケストラ」でも関連の話をしています。


豆の保存

 豆の状態は日々変化します。豆の保存に際しては「焙煎日よりの日数」と「保存する環境」が重要です。豆を買う際には焙煎日を確認してから買うようにすると、比較することが可能になります。缶入りや真空パックなどで長期間保存可能な豆を買うこともできますが、これまでのチェックポイントを試してみてまだ納得していない場合は、自家焙煎店から直接豆を購入してみると大きな発見があるかもしれません。
 焙煎日よりの日数は、必ずしも煎り立てが良いという訳ではなく、2〜3日後から2〜3週間後までが美味しいとされています。もちろん、何日目頃が一番美味しいかは、豆の種類や保管状態によって違います。(ある店では「焙煎日から2週間以内に使い切って下さい」と言い、ある店では「当店では焙煎日から2週間を過ぎた豆は棚から下ろして廃棄しています」と言っています。)
 同じ豆を「これは1週間前に焙煎した豆」「これは2週間前に焙煎した豆」と意識して飲んでいると、そのうち「××日以上たつとさすがに美味しくないな」「香りがないな」「クレマ(泡)が出ないな」「胃にもたれるな」などと思う日がくるでしょう。「買った日」から起算するのではなく「焙煎した日」から起算するのがポイントです。
 保存する環境は事情の許す限り良くすることが望ましいですが、環境を良くすることによって美味しく飲める期間が何日延ばせるか、という話であって、焙煎後の日数を気にかける必要があることには変わりありません。「エスプレッソ用の豆について」のページにも関連情報を掲載していますので、参考にして下さい。


上級編「マシン周りのチェックポイント」

 マシン周りをおろそかにすることによってエスプレッソが不味くなってしまうことがあります。抽出に用いる水質についても気になるところです。これまでのチェックポイントを試してみた上で更に気になる場合は、以下の4点を参考にしてみて下さい。

器具の清掃

 試しに、器具・マシンに豆を詰めずにお湯だけ入れて抽出操作を行ってみてください。コーヒー粉の残滓の混じった薄茶色いお湯が出てきたりしないでしょうか。
 器具に残留したコーヒー粉は酸化して、次回の抽出の妨げになります。抽出後には、フィルターを洗うのはもちろん、本体の抽出口もきちんと拭いておきましょう。マシンによってはお湯だけで抽出操作を行うと更に効果的です。
 特にマシンのワンド(蒸気ノズル)でミルクの泡立てをする人は、濡れ布巾を手元に置いて、泡立てが終わったらすぐに先端を拭いて、空ぶかしして、又拭いて、と繰り返さないと、ミルクが余熱で固まって目詰まりの原因になりますので注意して下さい。
 永年使っているとマシンの内部にカルシウムが沈着してくることがあり、いわゆるカルキ除去の必要が生じる場合があります。また機種によってはマシン内にコーヒーが逆流するのでタンパク質除去の必要が生じる場合があります。しかし、マシンを初めて買ってきて家庭で1日1〜2回使う程度であれば、当面は気にしなくてよいと思います。説明書に従い、毎日の清掃に心がけて、分からないことがあったらラウンジで相談して下さい。


器具の温度

 直火式の器具の場合は、抽出時の温度はむしろ高過ぎるくらいですが、カップが冷たいと少量のエスプレッソはすぐに冷めてしまい、濁ったり不味くなったりします。カップは温めておいた方が美味しいです。マシンの場合は90度弱のエスプレッソにとっての適温で抽出することが多いので、なおさらカップを温めておくことが重要です。
 更に、フィルターやホルダーが冷たくても抽出温度が下がってしまうので、これも温めておいた方がよい場合があります。プロの場合は、しばらく注文がなかった後は、注文の後の最初の一杯をわざと捨てて2杯目から客に出す店もあるほどです。家庭で楽しむ場合はそこまで厳密な温度管理はいりませんが、少なくとも、放置しておいたフィルターを抽出前に慌てて冷たい水で洗ってそのまま使うよりは、抽出前に湯通しするか蒸気をあてるかして温めた方が無難でしょう。


浄水器

 日本の水道水は一般的に軟水(カルシウム等が少なくマシンを傷めない)かつ清潔(砂粒や濁りでマシンを傷めない)ですので、あなたが水道水の美味しい地方に住んでいて、水道水を飲用に使っているのであれば、「エスプレッソに水道水を使ってはいけません」と脅すつもりはありません。それでも、家庭で浄水器を使っている方は是非エスプレッソにも使って欲しいですし、予期せぬサビや濁りから繊細なエスプレッソマシンの機構を守るためにも、安価なもので構わないので浄水器を使うとより安心です。
 軟水か硬水かを気にする人が多いですが、日本の水道水や日本で普通に売られているミネラルウォーター(比較的軟水)はコーヒー抽出にも適しています。また、エスプレッソは普通のコーヒーやお茶に比べると水の占める割合が少なく、水が味に及ぼす影響は比較的小さなものです。普通の人が日本の家庭でエスプレッソを楽しむ場合には、余り水に神経質になる必要はないでしょう。もちろん「やるべきことはすべてやった」と自分で納得するために蒸留水や硬水で抽出してみるのも一案です。


整水器

 最近はアルカリイオン水を作る整水器も普及してきました。パンフレットには「コーヒーや紅茶の抽出にはアルカリ水が適している」等の説明がありますが、これは単純に言えばアルカリ性の水の方が物質の成分を溶かしやすいからです。濃厚なエスプレッソを更に濃厚にするためには良さそうな話ですが、しかし、コーヒー豆の成分には旨味成分もあれば雑味成分もあります。アルカリ水は旨味成分だけを選んで溶かし出す訳ではないので、単純に「アルカリ水を使えば美味しくなる」とは限りません。これまで美味しく飲めていた豆と抽出方法でも、アルカリ水に変えたら過抽出の出がらしコーヒーになってしまった、ということにもなりかねません。
 これらを承知の上で試行錯誤をやり直す覚悟があれば、これまで以上に素敵な一杯に出逢うことができるかもしれません。しかし単に「整水器を買ったらエスプレッソが美味しくなるのかなあ、でも高いなあ」と迷っている段階であれば、まずはより良いマシンや豆挽き器の購入、あるいは新しいコーヒー豆の開拓に予算を振り向けた方が効果的です。


研究編「更なるチェックポイント」

 ここから先は必ずしも自分でコントロールできるものではなく、毎日家庭でエスプレッソを楽しむためには不要かもしれませんが、エスプレッソの仕上がりに影響を及ぼす可能性のある要因について書いてみました。

環境的要因(天候・季節・場所)

 温度、湿度、気圧などの環境が変わると、エスプレッソの味は変わってくるでしょうか? 理屈では微妙な違いが出るはずではありますが、実際にはよほどのプロでない限り、自宅で普通にいれて飲んでいて「あ、雨が降ってきたから味が変わってきた」といった違いを舌で感じることはまずありません。と言うより、続けて2回抽出してみても味が異なることが少なくないように、エスプレッソの抽出においては、豆の量や詰め込み具合といった基礎的な条件の微妙な違いの方が、はるかに味に及ぼす影響が大きいです。
 もしあなたが実際に環境の違いによる味の違いを感じているのであれば、その違いをコントロールすべく、環境的要因にも気を配りましょう(具体的な対処方法についてはいずれ掲載します)。但し、もしあなたが味の違いを感じていないのであれば、理論的可能性に振り回されず、まずは基礎的チェックポイントをしっかり固めましょう。


身体的要因

 体調が悪ければ、エスプレッソに限らず飲食物は美味しくありませんし、体に負担に感じます。3日前に飲んだ時は美味しかったのに、今日飲むと胃にもたれた、という場合、今日の体調が悪いからそうだったのかもしれませんし、豆が古くなったからそうだったのかもしれません。
 エスプレッソをいれる目的は、成分の優れたエスプレッソを抽出することではなく、エスプレッソを美味しく飲むことです。せっかく試行錯誤の結果として成分の優れたエスプレッソを抽出することができても、自分の体調が崩れていて美味しく飲めないのでは勿体ない話です。最後の詰めを怠らないよう、体調にも気を配りましょう。その日の体調に合わせて、砂糖やミルクの種類や分量などを変えてアレンジメニューを選択するのも一案です。


心理的要因

 その時の気分次第でエスプレッソの味も違って感じる、というのは体調の話と同様なので省略して、ここでは、他の人のためにエスプレッソを作る場合の話をします。
 「まごころを込めた一杯」という言葉があります。作り手のまごごろが込められている一杯は美味しさも格別です。中には「まごころ」といった主観的・感情的な概念を嫌う人もいますが、このような人に対して私は、次のような3つの説明をしています。
 まず、「まごころを込めた一杯」は客観的にも成分の優れた一杯であることが多いはずです。なぜなら、「まごころを込める」際には、これまでに挙げたチェックポイントを含め、抽出に関連する様々な要素に対して細心の注意と配慮が払われるからです。
 また、「まごころを込めた一杯」は客観的に飲み手の嗜好に合った一杯であることが多いはずです。なぜなら、「まごころを込める」際には、飲み手の嗜好が分かっている場合には嗜好に合わせて抽出やアレンジを行うでしょうし、分からない場合には嗜好を尋ねるか、あるいは飲み手の嗜好を想定しつつお勧めの一杯を作るでしょう。
 そして、「まごころを込めた一杯」は、まごころを込めた接客で飲み手に渡されることが多いはずです。飲食における接客の善し悪しは味の印象を大きく左右します。特にエスプレッソは抽出後すぐに提供される必要があるため、抽出・アレンジを行う人が直接飲み手に渡すことが一般的であり、作り手のまごころが飲み手に伝わりやすい飲み物です。  このように、美味しいエスプレッソに出逢うためには心理的要因もおろそかにできません。自宅に来たお客さんにはまごころを込めた一杯を出したいものです。


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