マシン周りをおろそかにすることによってエスプレッソが不味くなってしまうことがあります。抽出に用いる水質についても気になるところです。これまでのチェックポイントを試してみた上で更に気になる場合は、以下の4点を参考にしてみて下さい。
● 器具の清掃
試しに、器具・マシンに豆を詰めずにお湯だけ入れて抽出操作を行ってみてください。コーヒー粉の残滓の混じった薄茶色いお湯が出てきたりしないでしょうか。
器具に残留したコーヒー粉は酸化して、次回の抽出の妨げになります。抽出後には、フィルターを洗うのはもちろん、本体の抽出口もきちんと拭いておきましょう。マシンによってはお湯だけで抽出操作を行うと更に効果的です。
特にマシンのワンド(蒸気ノズル)でミルクの泡立てをする人は、濡れ布巾を手元に置いて、泡立てが終わったらすぐに先端を拭いて、空ぶかしして、又拭いて、と繰り返さないと、ミルクが余熱で固まって目詰まりの原因になりますので注意して下さい。
永年使っているとマシンの内部にカルシウムが沈着してくることがあり、いわゆるカルキ除去の必要が生じる場合があります。また機種によってはマシン内にコーヒーが逆流するのでタンパク質除去の必要が生じる場合があります。しかし、マシンを初めて買ってきて家庭で1日1〜2回使う程度であれば、当面は気にしなくてよいと思います。説明書に従い、毎日の清掃に心がけて、分からないことがあったらラウンジで相談して下さい。
● 器具の温度
直火式の器具の場合は、抽出時の温度はむしろ高過ぎるくらいですが、カップが冷たいと少量のエスプレッソはすぐに冷めてしまい、濁ったり不味くなったりします。カップは温めておいた方が美味しいです。マシンの場合は90度弱のエスプレッソにとっての適温で抽出することが多いので、なおさらカップを温めておくことが重要です。
更に、フィルターやホルダーが冷たくても抽出温度が下がってしまうので、これも温めておいた方がよい場合があります。プロの場合は、しばらく注文がなかった後は、注文の後の最初の一杯をわざと捨てて2杯目から客に出す店もあるほどです。家庭で楽しむ場合はそこまで厳密な温度管理はいりませんが、少なくとも、放置しておいたフィルターを抽出前に慌てて冷たい水で洗ってそのまま使うよりは、抽出前に湯通しするか蒸気をあてるかして温めた方が無難でしょう。
● 浄水器
日本の水道水は一般的に軟水(カルシウム等が少なくマシンを傷めない)かつ清潔(砂粒や濁りでマシンを傷めない)ですので、あなたが水道水の美味しい地方に住んでいて、水道水を飲用に使っているのであれば、「エスプレッソに水道水を使ってはいけません」と脅すつもりはありません。それでも、家庭で浄水器を使っている方は是非エスプレッソにも使って欲しいですし、予期せぬサビや濁りから繊細なエスプレッソマシンの機構を守るためにも、安価なもので構わないので浄水器を使うとより安心です。
軟水か硬水かを気にする人が多いですが、日本の水道水や日本で普通に売られているミネラルウォーター(比較的軟水)はコーヒー抽出にも適しています。また、エスプレッソは普通のコーヒーやお茶に比べると水の占める割合が少なく、水が味に及ぼす影響は比較的小さなものです。普通の人が日本の家庭でエスプレッソを楽しむ場合には、余り水に神経質になる必要はないでしょう。もちろん「やるべきことはすべてやった」と自分で納得するために蒸留水や硬水で抽出してみるのも一案です。
● 整水器
最近はアルカリイオン水を作る整水器も普及してきました。パンフレットには「コーヒーや紅茶の抽出にはアルカリ水が適している」等の説明がありますが、これは単純に言えばアルカリ性の水の方が物質の成分を溶かしやすいからです。濃厚なエスプレッソを更に濃厚にするためには良さそうな話ですが、しかし、コーヒー豆の成分には旨味成分もあれば雑味成分もあります。アルカリ水は旨味成分だけを選んで溶かし出す訳ではないので、単純に「アルカリ水を使えば美味しくなる」とは限りません。これまで美味しく飲めていた豆と抽出方法でも、アルカリ水に変えたら過抽出の出がらしコーヒーになってしまった、ということにもなりかねません。
これらを承知の上で試行錯誤をやり直す覚悟があれば、これまで以上に素敵な一杯に出逢うことができるかもしれません。しかし単に「整水器を買ったらエスプレッソが美味しくなるのかなあ、でも高いなあ」と迷っている段階であれば、まずはより良いマシンや豆挽き器の購入、あるいは新しいコーヒー豆の開拓に予算を振り向けた方が効果的です。