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エスプレッソに関する誤解

はじめに - カフェインの量 - カフェインと健康 - 胃に悪い? - 砂糖 - 苦い? - 表面の泡 - おわりに - 妊産婦の場合 - デカフェの豆 - 缶コーヒー

はじめに

 コーヒーとエスプレッソは別の飲み物と言っても過言ではありませんが、両者の違いが余り知られていないため、普通のコーヒー(ペーパーフィルターで入れたドリップコーヒーなど)に接するのと同じ調子でエスプレッソに接する人が多くいます。そのため、エスプレッソ本来の魅力が理解されないまま出逢いの機会を逃してしまうことも少なくありません。

 ここでは、エスプレッソに関する典型的な誤解を列挙してみます。みなさんが偏見なくエスプレッソに接するようになり、一人でも多くの人が素敵なエスプレッソに出逢うきっかけになれば幸いです。

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カフェインの量

 エスプレッソはカフェインが多いの? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 エスプレッソは普通のコーヒーよりもカフェインの量が少ないのです。


(難しく言えば…)
 コーヒー豆を煎る(焙煎する)際にコーヒー豆に含まれるカフェインの一部が飛ぶ(揮発する)のですが、エスプレッソには深煎りの豆を使うので、コーヒー豆を深煎りにする過程でカフェインの量は更に少なくなります。また、コーヒーを入れる(抽出する)際にコーヒー豆に含まれるカフェインが溶け出しますが、エスプレッソでは短時間で抽出するためにカフェインが余り溶け出しません。この2つの理由が合わさって、エスプレッソはドリップ・コーヒーに比べて一杯当たりのカフェイン含有量が少ないのです。

 具体的に一杯当たりのカフェイン含有量(注1)については、豆の種類、深煎りの具合、抽出の方法により変わるので一概には言えませんが、ある文献(注2)では「エスプレッソでは一杯あたりのカフェインの量は 60〜120mg だが、他のタイプのコーヒーの場合、150〜300mg にもなる」と述べており、他の文献の数値もエスプレッソについてはおおむねこの範囲内です。「他のタイプのコーヒー」にも各種ありますが、ペーパーフィルターで入れたドリップコーヒーのカフェイン量は、エスプレッソよりは多いものの、「他のタイプのコーヒー」の中では比較的少ないようです。

 およその目安として「エスプレッソのカフェインは一杯 100mg、普通のコーヒーのカフェインは一杯 150mg」と覚えておくとよいでしょう。但し条件によって実際の数値は大きく異なることは忘れないでください。「エスプレッソも普通のコーヒーもカフェインの量は変わらない」という人もいますが、必ずしも誤りではありません。特に抽出方法が不適切な場合、往々にしてカフェインの量は多くなります(それ以前の問題として不味くなります)ので注意して下さい。

(注1) ここで「一杯当たり」というのは、エスプレッソではデミタス一杯、普通のコーヒーではコーヒーカップ一杯を指します。一杯分の豆から溶け出るカフェインの量はエスプレッソの方が少なくても、エスプレッソに用いられる湯量より普通のコーヒーに用いられる湯量の方がはるかに多いので、1ccあたりのカフェイン含有量を比較するとエスプレッソの方が多くなります。しかし、ここでは一杯を飲み干した際に体内にどのくらいのカフェインが摂取されるかが問題なので、1ccあたりの比較をしても余り意味はありません。

(注2) 「エスプレッソ−その味と香り−」より引用しました。

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カフェインと健康

 エスプレッソのカフェインは体に悪いの? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 エスプレッソは普通のコーヒーよりカフェインが少ないので、普通のコーヒーよりも身体に優しく、非常識な分量を飲まない限り、特に体に悪くはありません。

※ 妊産婦の方は「妊産婦とエスプレッソ」のページを参照して下さい。

※ デカフェ(カフェインレス)のコーヒー豆に関心のある方は「デカフェ(カフェインレス)のコーヒー豆」のページを参照して下さい。



(難しく言えば…)
 そもそも「カフェインは身体に悪い」という先入観自体に誤解があり、カフェインには良い面も悪い面もあるのです。しかし、カフェインと健康については、多くのコーヒー関連文献やウェブサイトが論じていますので、詳細はそちらにお任せすることにして、ここではエスプレッソを念頭に置いて簡単に説明します。

 一般的に、200mg のカフェインは副作用なしに脳の活動を活性化させる(思考力や集中力を高め眠気や疲労感を軽減させる)が、500mg を越えるとかえって頭痛や不眠をもたらし、1000mg を越えると動悸や目眩などの副作用を引き起こすと言われます(注3)(注4)

 エスプレッソ1杯のカフェイン含有量を 100mg とすると、2杯で適量、5杯で逆効果、10杯で副作用、という計算になりますが、エスプレッソを1度に5杯飲んだり1日に10杯以上飲んだりする人は余りいないでしょう。普通の体調の人が普通の飲み方をしている限り、エスプレッソを愛飲しても健康上の問題はありません。むしろエスプレッソは普通のコーヒーよりも身体に優しい飲み物であるといえます。

 なお、カフェインが少なくても、エスプレッソを飲むこと自体が気分転換になって頭がすっきりするという場合があります。あるいは、カフェインが多いので眠れなくなるのだと思いこんでいると、それだけで実際に眠れなくなる場合もあります。したがって「エスプレッソを飲むと眠れない」という人は少なからずいますが、それは必ずしもカフェインのせいではありません。

 それから、豆の扱いや抽出方法が悪いためにカフェインが不必要に出てしまう場合もあるかもしれませんが、その場合はきっと味も渋くて不味いはず(お茶の出がらし状態)です。

(注3) 「序説 珈琲学」(友田五郎著、光琳)その他を参照しました。

(注4) ちなみに、市販の栄養ドリンク剤のカフェイン含有量は 50mg 程度、眠気覚ましを宣伝文句にしているドリンク剤のカフェイン量は 150mg〜200mg です。普通のコーヒーと比べてそう多くありませんが、カフェイン以外にも類似の成分が各種含まれており相乗効果を挙げているという側面と、刺激のある味で飲む人の気分を興奮させているという側面があります。

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胃に悪い?

 エスプレッソは胃に悪い? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 エスプレッソは普通のコーヒーより胃に優しいのです。豆の保管状態や飲み方が悪いと胃に負担がかかることがありますが、それは避けることが出来ます。


(難しく言えば…)
 エスプレッソが胃に悪いという誤解について、私(バリスタ)が遭遇した3つのタイプ別に説明します。

(1)「エスプレッソにはカフェインが多いので普通のコーヒーよりも胃に悪い」という先入観に基づく誤解が多く見受けられます。上述の通り、普通のコーヒーよりもエスプレッソにはカフェインが少ないのです。

(2)エスプレッソに限らず、およそコーヒーのカフェインが胃に悪いという誤解も一般的です。これは部分的には正しく、カフェインその他の成分が胃液の分泌を活発にするため、胃酸過多や胃潰瘍の人が、あるいは空腹時に、コーヒーを飲むと胃に負担がかかります。反対に、胃酸過小の人や満腹時にコーヒーを飲むと消化促進につながります。
 これをどう評価するは各人の問題ですが、一概に「胃に悪い」というのは言い過ぎのような気がします。胃薬だって胃液分泌を促進するものと抑制するものがあり、使用法を間違えると逆効果になりますが、だからといって「胃薬は胃に悪い」というのは胃薬に対して失礼です。
 なお、エスプレッソは普通のコーヒーよりも胃に優しいのですが、更に胃を気遣うのであれば、朝食の際にはミルクをたっぷり入れたカプチーノやカフェ・ラテを楽しみ、濃いエスプレッソは昼食や夕食の後に楽しむことをお勧めします。特に、本格的な器具でいれた濃いエスプレッソをダブルで飲むような場合は、口休めに水を飲みながら味わうというのも一興です。

(3)エスプレッソに限らず、コーヒーを飲むと胸焼けをする、あるいは気持ちが悪くなる、という人が結構います。実は私も今でも時々経験しますが、大抵は客の入りが少ない喫茶店や、訪問先のオフィスや家庭で出されたコーヒーであることから、コーヒー豆の保管の問題が大きいのではないかと考えています。
 コーヒー豆は約15%が植物性油脂であり、空気に触れると酸化します。特に、一旦挽いてしまった豆は空気に触れる面積が大きいので急激に酸化します。豆の保管については様々な書籍やウェブサイトで述べられていますが、要するに「コーヒー豆は天ぷら油のつもりで扱う」とよいでしょう。酸化した古い油で揚げた天ぷらを食べると胸焼けを起こすように、酸化した古いコーヒー豆で入れたコーヒーを飲むと胸焼けを起こします。
 コーヒーが苦手だという人の多くは、過去にこのような体験があるようです。これはコーヒーにとっても不幸なことです。たとえ喫茶店であっても、保管状態の悪そうな店で、余り売れていないような種類の豆を注文する際には注意して下さい。

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砂糖

 エスプレッソの砂糖が身体に悪い? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 エスプレッソに入れる砂糖の量は思ったより少なく、普通のコーヒーやジュースと同じ程度です。


(難しく言えば…)
 小さなデミタス(エスプレッソ用のコーヒーカップ)にスプーン山盛り一杯の砂糖をざらりと入れるのは、一見すると大量で身体に悪そうな気がします。しかし、大きなマグカップ一杯のコーヒーやポット一杯の紅茶にスプーン山盛り一杯の砂糖を入れることに対して身体に悪いと騒ぐ人は余りいません。これは目の錯覚によるものが大きいように思います。最終的に体内に入る砂糖の分量が同じであれば、砂糖を入れる対象が少量だろうと多量だろうと身体に及ぼす影響は変わりません。

 また、デミタス半量のエスプレッソに砂糖をスプーン山盛り一杯を入れても、その糖度はミカン果汁やコーラと同程度でしかありません(ぶどう果汁やパイン果汁はもっと甘い)。したがって、あなたが医者に糖分の摂取を禁じられていているのでなければ、特に砂糖の摂りすぎを気にせず、あなたが一番おいしいと思う分量の砂糖を入れてエスプレッソを楽しむのが一番だと思います。

※ エスプレッソと砂糖の関係については、エッセイ・エスプレッソの第1話「おばあちゃんのみそ汁」でも扱っています。

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苦い?

 エスプレッソは苦くてまずい? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 正しく入れたエスプレッソは美味しいのです。苦くて不味いのであれば、入れ方か飲み方に工夫の余地があります。


(難しく言えば…)
 お店でエスプレッソを飲む場合には、入れ方に工夫の余地はありませんが、飲み方には工夫の余地があります。自分に合った飲み方をしていない場合には、苦い、不味いと感じることもあります。

 まず、一般的にエスプレッソには適量の砂糖が似合います。「自分はいつもコーヒーはブラックで飲んでいるから」という理由だけでエスプレッソをブラックで飲んでいる方は、一度、コーヒーとエスプレッソは別の飲み物だと思って、砂糖を入れて飲んでみてください。

 また、エスプレッソは牛乳にもよく合います。エスプレッソは苦手だがカプチーノやカフェ・ラテは大好きだという人もいます。普通のコーヒーにパック入りや粉末のミルクやクリームを入れるのが嫌いだという人も、一度、濃厚なエスプレッソと本物の牛乳の組み合わせを試してみて下さい。

 自分でエスプレッソを入れる場合には、更にコーヒー豆の選択や抽出方法にも工夫の余地があります。エスプレッソ・マシンに合った入れ方をしていない場合には、苦い、不味いと感じることもあります。

 まず、豆の選択が不適切だと不味い仕上がりになります。エスプレッソ・マシンの機種により若干の違いはありますが、一般的に、普通のコーヒー(ペーパーフィルターで入れるドリップ・コーヒー)よりも深煎りの豆を細挽きにします(詳しくは「コーヒーとエスプレッソの違い」を参照)。豆の保管についても重要で、長い間放置して酸化した豆でコーヒーを入れると不味くなってしまいます。

 抽出に際して一番多い失敗は抽出量が多すぎることです。日本茶でいう出がらしの状態になり、コーヒー豆の雑味成分まで溶け出して、苦くて不味い仕上がりになってしまいます。お店で出されるエスプレッソにも若干抽出量が多すぎ気味のものがありますので気をつけて下さい。

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表面の泡

 泡立つコーヒーがエスプレッソである? → それは誤解です。

(簡単に言えば…)
 本格的な美味しいエスプレッソの表面には濃密な泡が浮きますが、機種により泡が浮かなくても美味しいエスプレッソは作れますし、その反対に、本格的な美味しいエスプレッソでなくても強引に泡を立てることは出来るので、一概に「泡立つコーヒーがエスプレッソである」とは言えません。


(難しく言えば…)
 「コーヒーとエスプレッソの違い」のページの「成分が違う」という項目の注釈としてエスプレッソの泡について説明しています。詳しくはこちらをご覧下さい。

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おわりに

 エスプレッソに関する誤解の多くは「エスプレッソは普通のコーヒーよりも健康に悪い」というニュアンスのものです。これに対しては、私は「エスプレッソは普通のコーヒーよりも身体に優しい」と反論することにしています。

 その一方で「コーヒーは健康に良い飲み物である」と反論している文献もよく見かけます。その意味では「エスプレッソは普通のコーヒーよりも健康に良い」という主張も出来るのですが、ここではそのような説明は省略しています。

 エスプレッソを含め、コーヒーは嗜好品です。私はエスプレッソが美味しいから愛飲しているのであって、健康のために飲んでいるわけではありません。また、健康のためにエスプレッソを飲むように他人に勧めるつもりはありませんし、エスプレッソの味が嫌いな人に無理強いするつもりもありません。

 でも、本当はエスプレッソが好きなのかもしれないのに「エスプレッソは健康に悪い」という誤解のためにエスプレッソから遠ざかっている人や、たまたま質の悪いコーヒーやエスプレッソを飲んでしまい「エスプレッソは不味い」と誤解してエスプレッソから遠ざかっている人に対しては、もったいない、何とかしたいと思っています。

 今後説明内容を随時加筆していき、充実したコンテンツにしたいと思います。コメントがある方は是非エスプレッソ・ラウンジにてお聞かせ下さい。

※ ここでは平易な記述にすることを優先させましたので、厳密性を欠く箇所もあると思いますがご容赦願うと共に、明らかな誤りがあれば速やかに修正しますので指摘して下さい。このサイトの運営方針等につき詳しくはこのサイトについてをご覧下さい。


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