● はじめに
深煎りのコーヒー豆を細かく挽き、専用の器具を用いて圧力をかけ短時間で抽出した、濃い少量のコーヒーのことを「エスプレッソ・コーヒー」、略して「エスプレッソ」と呼びます。
コーヒーをエスプレッソで飲む方法は、19世紀後半にフランスとイタリアで模索され、20世紀前半にイタリアで普及し、20世紀後半に北米で普及し、近年になって日本でも広まりつつあります。
エスプレッソはコーヒーの一種ですが、普通のコーヒー(ペーパーフィルターを使って入れるドリップ・コーヒーなど)とは、様々な点で違いがあります。「コーヒー」と「エスプレッソ」は別の飲み物と言っても過言ではありません。
しかし、両者の違いが余り知られていないため、コーヒーに接するのと同じ調子でエスプレッソに接する人が多く、そのためエスプレッソ本来の魅力が理解されないまま、エスプレッソとの素敵な出逢いの機会を逃してしまうことも少なくありません。
ここでは、エスプレッソが好きな人だけでなく、エスプレッソについてよく知らないという人や、どうもエスプレッソは苦手だという人にも、まずは両者の違いを知って欲しいと思い、以下の説明を書いてみました。
● 器具が違う
(簡単に言えば…)
エスプレッソをいれるには専用の器具を使い、圧力をかけて短時間に抽出します。
(難しく言えば…)
コーヒーをいれるとは、お湯がコーヒー豆の粉の間を通り抜ける際にコーヒー豆の成分をお湯の中に溶かし出す(抽出する)ことです。
例えばペーパーフィルターを使って入れるドリップ・コーヒーの場合、お湯は自分の重みでコーヒー豆の粉末の間を通り抜け、フィルターの下の容器に落ちていきます。この時にお湯に加えられている力は重力だけです。
エスプレッソの場合、お湯に圧力を加えて強制的にコーヒー豆の粉の間を通り抜けさせます。そのために専用の器具(エスプレッソ・マシン)を使います。圧力を加えるには、蒸気圧を使う方法、人間の力を使う方法、電動ポンプを使う方法など各種あり、エスプレッソ・マシンにも様々な種類のものがあります。加えられる圧力も1.5気圧程度のものから10気圧を超えるものまで様々で、ある程度圧力の高い方が本格的な(普通のコーヒーとの違いがより大きい)エスプレッソになります。一般的にエスプレッソ抽出には9気圧が理想的と言われており、家庭用エスプレッソマシンも、ポンプ式のものはこの条件を満たしています(詳しくは「マシンについて」のページを参照)。
(注)1.5気圧程度しかかからない器具(直火式ポット等)で抽出したコーヒーを「エスプレッソとは言わない」とする人もいますが、歴史的にはこれらもエスプレッソと呼ばれており(詳しくは「エスプレッソの歴史」のページを参照)、このサイトではこれらもエスプレッソとして扱います。
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| エスプレッソマシン(直火式) |
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| エスプレッソマシン(ポンプ式) |
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● 豆が違う
(簡単に言えば…)
エスプレッソを入れるにはコーヒー豆を深煎りの細挽きにして使います。
(難しく言えば…)
コーヒー豆には何百種類もの成分が複雑に組み合わさって、酸味や苦み(どちらも適度に必要です)など様々な味と香りを生み出していますが、それら成分がお湯の中に溶け出る速度や順番は、お湯の温度や圧力によって変わります。
一般的に、ドリップには比較的浅煎りの豆(酸味が多く苦みが少ない)を使うのに対し、エスプレッソには深煎りの豆(酸味が少なく苦みが多い)を使います。これは、基本的には味の好みの問題ですが、一つには、コーヒー豆は深煎りにした方が細胞組織がもろくなって成分が溶け出やすくなるため、短時間で急速に成分を溶かし出すエスプレッソには深煎りの豆の方が向いているという事情もあります。
また、エスプレッソではお湯が短時間にコーヒー豆の粉の間を通り抜けるため、粗挽きのコーヒー豆でエスプレッソを入れると、豆の成分が十分にお湯の中に溶け出さず、薄い仕上がりになります。反対に、細挽きのコーヒー豆でドリップ・コーヒーを入れると、濃い仕上がりになります。
(ドリップ・コーヒーでも、アイスコーヒーにする場合には深煎りで細挽きの豆を使います。氷で薄まらないよう濃いコーヒーを抽出するという意味で、エスプレッソに共通するものがあるのかもしれません。)
● 成分が違う
(簡単に言えば…)
エスプレッソは濃く、旨味が凝縮され、カフェインが少ないコーヒーです。
表面が細密な泡で覆われていることがあります。
(難しく言えば…)
エスプレッソでは圧力をかけてコーヒー豆の成分をお湯の中に溶かし出す(抽出する)ので、ドリップ・コーヒーと比べ、同じ量のお湯の中に溶け出す成分の量が多く、したがって全体としては濃い仕上がりになります。
しかし、ドリップ・コーヒーをそのまま濃縮したものがエスプレッソという訳ではありませんし、エスプレッソをお湯で薄めてもドリップ・コーヒーと同じになる訳ではありません。
コーヒー豆には何百種類もの成分が含まれていますが、それらの中には、エスプレッソを抽出する際、高い圧力で抽出するため多く溶けだすという成分もあれば、短時間で抽出するため余り溶け出さないという成分もあります。したがって、エスプレッソの成分の内訳はドリップ・コーヒーとは異なります。
コーヒー豆の粉がお湯に接する時間が長すぎると、不必要な雑味成分まで溶け出してしまいます(日本茶で言う「出がらし」の状態)。エスプレッソでは短時間で抽出するので、雑味成分が溶け出す前に抽出を終えることができ、その分、エスプレッソはコーヒー豆の持つ旨味成分の割合が高い(旨味の凝縮された)仕上がりになります。
人々の関心を集めるカフェインについて特に述べると、カフェインはコーヒー豆を深煎りにする過程でかなりの量が飛ぶ(揮発する)上に、エスプレッソでは短時間で抽出するため余り溶け出しません。したがって、エスプレッソはドリップ・コーヒーに比べて一杯当たりのカフェイン含有量が少ないのです。
(注)エスプレッソの泡について関心がある方は こちらをご覧下さい。
● 分量が違う
(簡単に言えば…)
エスプレッソは分量が少なく、専用の小さなカップで飲みます。
(難しく言えば…)
コーヒー一杯の分量は普通150cc程度ですが、エスプレッソではコーヒー豆の成分が凝縮されているので、一杯の分量は30〜40cc程度です。仮にエスプレッソ・マシンで一杯分のコーヒー豆から150cc程度も抽出してしまうと、雑味成分ばかり溶け出して非常に不味くなってしまいます(日本茶で言う「出がらし」の状態)。
エスプレッソを飲むには、デミタスという小さなコーヒーカップを使います。(デミタスとはフランス語で「小さなカップ」という意味です。)普通の大きさのコーヒーカップを使うと、エスプレッソが冷めやすくなってしまいます。また、家庭でエスプレッソマシンから直接コーヒーカップに抽出する場合にはどの辺が適量か(どの辺で抽出を止めたらよいか)の見分けがつきにくくなります。気分的にも、カップの底にたまったエスプレッソを飲むよりもデミタスに満たされたエスプレッソを飲む方が優雅な気がします。
普通のコーヒーカップには及びませんが、デミタスにも色々な形やデザインのものがあります。
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| (左から順に) マグカップ、コーヒーカップ、デミタス2種 | |
● 飲み方が違う
(簡単に言えば…)
エスプレッソには砂糖を入れて食後のデザート感覚で味わうのが一般的です。
ミルクやシロップ等と合わせた応用メニューも豊富です。
(難しく言えば…)
エスプレッソはイタリアが本場ですが、近年シアトルと中心とするアメリカでの流行を経て日本に普及しつつあります。イタリア系とシアトル系では飲み方にも独自の傾向があります。
<イタリア系のエスプレッソ>
イタリアでは、朝食時にミルクを加えたカプチーノを飲むことはありますが、大半の人はミルク等を加えずにストレートのエスプレッソに砂糖を入れて飲みます。
チョコレートやコーヒーの適度の苦みを含んだ旨味は、甘いものとの相性が抜群です。飲み比べた上でブラックの方が美味しいという人はそれで構いませんが、エスプレッソをブラックで飲むだけでは、エスプレッソの本当の魅力に出逢えないまま終わってしまうかもしれません。普通のコーヒーをブラックで飲んでいた人も、同じコーヒーだという先入観にとらわれず、一度はスプーン1〜2杯の砂糖かシロップを入れて飲んでみて下さい。イタリアでは砂糖が底に溶け残る位入れて飲むことがむしろ一般的です。
勉強や仕事の合間にお茶感覚で飲むならドリップ・コーヒー、食後のデザート感覚や気分転換に飲むならエスプレッソと、双方は別の飲み物と思って楽しんだ方が良いかもしれません。
<シアトル系のエスプレッソ>
シアトルをはじめとする北米ではストレートのエスプレッソを注文する人はそれほど多くなく、カフェラテやカプチーノのようにミルクと合わせたドリンクを飲む人が多いです。チョコレートやホイップクリームやフレーバーシロップ等と組み合わせた応用ドリンクのバリエーションが豊富です。好みのオプションを追加して自分独自のドリンクをオーダーする人も多くいます。
日本国内で以前からイタリア系のエスプレッソを知っていた人の中には、近年になって普及しつつあるシアトル系のエスプレッソは邪道だと思う人がいるかもしれません。しかし、どちらの飲み方も、それぞれの地域の人々の支持を得てきたものです。どちらが正しいかという話ではないので、自分の好みにあった飲み方で楽しんで下さい。
● おわりに
今後説明内容を随時加筆していき、充実したコンテンツにしたいと思います。コメントがある方は是非エスプレッソ・ラウンジにてお聞かせ下さい。
※ ここでは平易な記述にすることを優先させましたので、厳密性を欠く箇所もあると思いますがご容赦願うと共に、明らかな誤りがあれば速やかに修正しますので指摘して下さい。このサイトの運営方針等につき詳しくはこのサイトについてをご覧下さい。
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